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一時入国
早朝5時すぎ、ニノイ・アキノ国際空港に到着。
予定時刻より30分も早い。
搭乗であれだけ急かされたのだから当然着くのも早い。
睡眠は3時間半ほど。
うっすら寝たり起きたりを繰り返し、最低限の睡眠を確保したのみ。
今日が最終日だからこその深夜便だった。
連日バックパックを背負い続けてきたため首と肩が限界に達している。
出発時に10あったHPは2を切っているといったところ。
残りの体力を振り絞ろう。
緊張の入国。
乗り継ぎの経由地で一旦入国するという経験がなく、若干の不安あり。
eTravelもあれで大丈夫なのだろうか。
入国審査で「フィリピンでの滞在地は?」と聞かれ、想定外かつ英語のため言葉に詰まったが、「今日中に日本に戻ります」と言うと「あぁ、乗り継ぎね」と理解してもらえた。
乗り継ぎの場合、基本的には入国せずにTransfer専用エリアに向かうことになる。
空港で待つには長すぎる・観光するには短すぎるという微妙な乗り継ぎ時間だったが、入国して少しだけでも外に出る予定でいた。
そして恒例行事、現地通貨の調達。
これが最後の両替だ。
手持ちのSGDをPHP(フィリピンペソ)に。
まずは空港で何か食べよう。
フィリピンのファストフード界で圧倒的地位を誇る【Jollibee(ジョリビー)】。
まだ朝の6時だというのに行列。
のんびり並んで待つ。
定番のフライドチキンとスパゲッティのセットを注文。
その場ですぐに渡してくれる。
ひっきりなしに注文が入っているため常に揚げたてのチキンが待機しており、提供が早い。
どんどん混んでくる店内で席を確保。
さながらお子さまランチのようだが、これが美味かった…
フライドチキンは外パリパリ、中からは肉汁が溢れ出てくる。
スパゲッティは少し甘めのナポリタンという感じで上にはチーズがかかっている。
これを500円以下で食べられるなら個人的には十分満足。
結局こういうのでいいんだ…
HPが3くらいまで回復したため出かけよう。
ラスボス
ここで問題発生。
空港から中心地までのアクセスが非常に悪く、安い交通手段がほぼない。
これについては日本にいる間に調べ切れていなかった。
空港の外にあるバス会社の看板などから必死に情報を集める。
値段は少し張るが、中心地の近くまで運んでくれるバスが空港から出ているらしい。
これに乗るしかなさそうだ。
色々手間取っていたらもう8時を回っている。
バスに乗り込み、窓から見える景色に思わず息を飲んだ。
鉛のように重い空。
今にも崩れそうな建物にゴミの山、ぐちゃぐちゃに絡まり垂れ下がった電線。
その向こうには蜃気楼のように揺らめく高層ビル…
ここまで、タイとマレーシアでは貧富の格差を感じる瞬間は多々あった。
ここでは特にその度合いが強いように感じる。
詳しくは書かないが、実際にマニラの街に出てみればどういうことか分かると思う。
バスを降りてリサール公園まで1kmほど歩いたのだが、よそ者が歩くべきではないというただならぬ雰囲気を感じ、これ以上歩き回るのは断念した。
さらに排気ガスによる大気汚染がはっきり目に見えるくらい一帯が淀んでおり、気管がやられそうだったというのもある。
※帰国後、完全に喉がイカれてしまい、回復まで1週間を要した。その後もしばらく喉の違和感が消えなかった。恐るべし大気汚染。
決して悪い場所だと言っているわけではない。
私はマニラの空港と旧市街のごく一部しか見ていないし、ビジネス街であるマカティ地区やリゾート地セブ島などに行けばまたガラッと印象が変わるはずだ。
物事の一面だけ見て判断することはできない。
本当は、リサール公園のほかにもいくつか行きたい場所があった。
マニラ大聖堂やサンチャゴ要塞など、旧市街には見どころがたくさんあるのだ。
しかしそれどころではなくなってしまった。
安全と心の平穏のためにも引き返そう。
信号で待っていたら、隣にいたおばちゃん二人組のうちの一人から喋りかけられた。
「Filipino? Where are you from?」
「おー!日本人ネ!ワタシ高知に住んでたことアル、今から市場行く、すごく長い市場、公園よりそっち行く方がオカチマチみたいで絶対面白いネ」
(御徒町とかなぜ知ってるんだ…)
もう一人のおばちゃんからも初めて来たのかとか学生なのかとか英語で色々と質問された。
今から乗り合いバスで一緒に市場行こうやとゴリ押しで誘われたが、こちらはこれから空港に戻ろうとしている。
どう見ても世話を焼きたがるタイプのおばちゃんだったため帰らせてもらえないかもしれない。
間違いなく面白そうではあったのだが。
時間がない、ありがとうとだけ言って、急いで信号を渡ってその場から離れた。
それにしても日本語上手かったなぁ…
関西弁ではなかったが、完全に大阪のおばちゃんの風貌だった。(パンチパーマだったかも…)
本当によく現地人に声をかけられる。
私は東南アジア顔なのだろうか。
海外では常に、背中にも目があるつもりで歩いているが、客引き含め誰からも声をかけられないようにするというのは不可能だ。
特に今この緊張状態の中で絡まれると、警戒心が最高潮に達する。
流暢な日本語を喋る現地人など最も警戒すべき人物であることは知っている。
しかし先ほどのおばちゃんたちは、きっと大丈夫だ。
そんな気がする。
今回の旅で、日本語で"会話"したのはこれが最初で最後だった。
そしてまたしても立ちはだかる交通手段問題。
電車とローカルバスを乗り継げば、空港まで辿り着けるとGoogle mapが言っている。
そのルートに懸けるか。
ひとまず電車に乗り、ルートに示された駅まで向かう。
しかし降りた瞬間、これはバスに乗るのは無理だと判断。
えげつない交通量と人、バス停らしきものはどこにも存在せず、目当てのバスを見つけて乗るなど不可能だ。
ありえない車間距離でギチギチに詰まったタクシーやらジプニー(フィリピンの乗合バス)やらバイクやらがずっと連なっている。
これこそカオスと表現するにふさわしい光景。
とうとうここで、最後の最後に、秘密兵器発動。
Grabに頼ろう。
前回のタイで何度か世話になった配車アプリ。
ここまでタクシーを使わず、脚を酷使して地道に交通費を削減してきたが、今はもうそんなことは言っていられない。
空港に戻ることが最優先だ。
これだけ渋滞していても、空港まではあとわずかだからきっとなんとかなる。
現在地と目的地を設定する。
10分ほど待ち、ナンバーを確認してタクシーに乗り込む。
車種は三菱ミラージュG4、ここまで乗ってきたどの乗り物よりも綺麗だった。
車の外とのあまりのギャップに感覚がおかしくなりそうだ。
Grabの利点は事前オンライン決済ができること。
しかし手持ちのクレカがどれも弾かれてしまい、うち1枚は「不正利用が疑われたため一時的に利用を停止しています」などという事態になる始末。
諦めて現金払いに。
料金は192PHPで、200PHP札を出すとお釣りがないと言われたが、そうなるだろうと予想していたためそのまま200PHPで支払った。
8PHPはたったの20円程度でチップにすらならないような額だ。
空港へ送り届けてくれた感謝の意ということにしておこう。
こうして無事に空港まで戻ってくることができた。
心底ホッとした。
外にいたのは実質3時間弱だったが、HPは一気に0.2まで減ってしまった。
直接何かを食らったわけではないものの、かなりのダメージを負っているようだ。
まさかこれほど強烈なラスボスが待っていたとは。
ここまで地道に上ってきたステージの難易度が、飛躍的に上がりすぎだ。
攻略法を知らないまま足を踏み入れれば、ズタボロになるのも当然だろう。
HPがゼロになる前に回復させなければ。
帰ろう
チェックインはオンラインで済ませているため、保安検査へ直行してから昼食補給へ。
フィリピンのローカルチェーンレストラン「Tapa King(タパキング)」。
店内はほぼ満席。
最もオーソドックスと思われるClassicのセットを注文。
ご飯に目玉焼き、牛肉を炒めたもの、黄色い漬け物のようなものがワンプレートに盛られている。
正直に申し上げると、これは自分でも作れ…いや、何でもない。
肉の焼き方とか、ガーリックライスとか、きっとこだわりは詰まっているのだろう。
極限まで疲れた状態で食べているためもちろん美味いのだが、ちょっと期待しすぎた。
ジョリビーのチキンに関してはまた食べたいと思う。
という苦し紛れのフォローを入れておく。
つべこべ言わず、何でもありがたく食べる。
これは私の旅のルールだ。
だから多少がっかりしても全部食べるし、経験だと思うようにしている。
とにかく、これでHPも1.5までは回復した。
少しだけお土産も買えたため、あとは帰るだけだ。
残った約80PHPを握りしめて、帰りの機内で食べるお菓子をレジに持って行くと、85PHPだと。
え、値札には75と書いてあったのにこれは違ったのか…
レジのお兄さんに「足りないから違うのに替えてくる」と言ってお菓子を戻しに行こうとしたら、「いいよいいよ、それ持ってきな」と。
空港の制限エリア内の売店のレジで負けてくれるなど、そんなことして大丈夫なのだろうか。
最後にラッキー(?)なことがあって少し救われた気がした。
シンガポール~マニラ便のファイナルコール事件での教訓から、今回は絶対に搭乗口の目の前で待機しよう。
とはいえまだ時間があるため付近の免税店を冷やかしに行こうと思ったら、SMSでメッセージが届いた。
航空会社からだ。
これはまさか…
マレーシア~シンガポールのバス時間変更事件が脳裏をよぎる。
恐る恐るメッセージを読んでみると、搭乗口変更のお知らせだった。
なんだ、それならよかった…
胸を撫でおろす。
今いるのはターミナルの端。
変更先は逆側の端。
これがそれなりに遠かった。
だからきっちり知らせてくれたのか。
その後もしきりに搭乗口変更のアナウンスが流れていた。
無事に搭乗、定刻で出発。
機内で今日の出来事をひたすらメモる。
一番短い滞在だったにもかかわらず、なぜこんなに書くことがあるのだろう。
写真に関しては、マニラの街に降り立って早々にカメラを仕舞ったためほとんど撮れなかった。
脳裏に焼きついている風景を、覚えているうちに言語化しておかなければ。
疲れたをとっくに通り越しているはずだが、眠くはならない。
いまだに緊張が解けず、目が冴える。
フィリピンから福岡は意外と近く、4時間ほどで到着。
ただいま日本…!
これにて修行は終了。
長く短い8日間だった。
日本で生活している以上、ある意味狭いコミュニティの中しか見えていないし、それで困ることも特にない。
ネットで簡単に、どんな情報も手に入る。
だからこそ、自分の概念をぶち壊すような刺激を入れておくことは必要だと思っている。
まぁ今回は、少し刺激が強すぎたりしたのだが。
自分で見て、聞いて、肌で感じたことが本物。
経験値がぐっと上がったのは間違いない。
これをもって、修行の報告とさせていただきます。
私は少し成長できたのでしょうか、師匠。(誰)
次はどうぞお手柔らかにお願いします。
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