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修行のはじまり
組んだ日程をすべて書き出し、果たして私は本当にこれをやろうとしているのだろうかと、どこか他人事のように眺める。
8日間で東南アジア4ヵ国5都市。
マレー半島縦断、陸路国境越え2回。
日本出国から帰国まで10万円。
綿密に調べ上げ、いけると思ったから組んだのだ。
いやしかし…不安がないわけではない。
旅のスケジューリングとサーチに関してはある種の特殊能力を持ち合わせていると自負しているが、今回の旅は未知数の部分が多かった。
完成形の見えないパズルのピースをはめてみては崩してを何度も繰り返し、外枠からジリジリと固めていった。
まだところどころ欠けている箇所もあるが、現地で何かしらの手がかりを見つけてこいということだろうか。
これは海外旅行ではない。修行だ。
なぜわざわざそんなことをするのかと聞かれても、よく分からない。
なんか面白そうだったから。
ただそれだけの理由で、バックパックを背負い、気付けばバンコクの熱気を再び感じていた。
再訪
1年4ヵ月ぶりに、バンコクに降り立った。
外に出ればむせ返るような独特の匂い。
そう、これ…!
前回の記憶が鮮明に蘇る。
この匂いとまとわりつくような暑さこそが、タイの第一印象だった。
また戻ってきてしまった。
しかし今回はとても短い滞在になる。
ここは修行の起点にすぎず、振り返ることなく次へ向かわねばならないのだ。
異国に着いてまずやるべきこと。
両替。
タイはキャッシュレスがそこまで進んでおらず、チップ文化もあるため現金は必須。
空港内はどこもレートが悪く、空港外にある両替ショップ【ハッピーリッチ】が良いという情報を得ていた。
知らなければたどり着けないような場所にひっそり存在しており、確かにレートは良い。
予算を決めている以上、どうしてもお金にはシビアになる。
こういうところで少しでも損をしないように。
これから行く国は当然のことながらすべて通貨が異なるため、あと何回両替ショップに世話になるのだろう…
空港から中心部へ向かうためにバスを待つ。
30分おきのはずだが、45分ほど待っただろうか。
時刻表はない。
◯◯分おきというアバウトな指標もあってないようなもので、結局何時にくるのかは分からない。
ここではイライラするだけ無駄だ。
誰も何とも思っていないから。
何事も気長に待てるだけの心の余裕が必要。
タクシーを呼んでいれば1時間ほど早く中心部に出られたかもしれないが、初日から快適をお金で買ってしまうとあとに響きそうだったため、バスを待った。
銀色の筒を持った集金のおばちゃんに運賃を支払う。
筒の中にはお釣りと、乗車券代わりの紙が入っている。
ドライバーのお姉さんはイカつい運転で高速を飛ばしていく。
※ちなみに今回、名も知らぬ遭遇者が何人も登場するが、その人を最もよく表していると思われる呼び方で書いている。
なんとなくイメージしながら読んでいただけると幸いである。
昼間は渋滞というほどではなく、比較的スムーズに進む。
エアコン付きのバスで快適だった。
バス待ちで予定よりも大幅に時間が押してしまい、急いで昼食を食べに向かう。
この時点で14時、日本時間で16時。
日本で朝食としてコンビニのパンをかじったのが7時前だったため、空腹でエネルギーが切れそうだ。
目当てはカオソーイ。
タイ北部の料理で、スープカレーの麺verといったところだろうか。
カレー狂としては、今回ももちろん何食かはカレーもしくはカレー味の料理を食べるつもりだ。
しまった、高額紙幣しか手元にない。
1杯80THB(タイバーツ)に対して1,000THB札を出すと案の定お釣りがないと言われて諦めようとしたが、店のお姉さんがその1,000THB札を手にどこかへ行ってしまった。
なんと両替に行ってくれたらしい。
申し訳ない…ありがとうございます…
高額紙幣は早めに崩しておく、が鉄則。
前回のタイで学習していたのにうっかりしていた。
気を付けなければ。
少し幅のある路地にテーブルと椅子を置き、調理は小さな倉庫のようなスペースで。
一応屋根はあり、屋内とも屋外とも言い難い店だ。
席に着いて早速、足元でゴキ○リがスーッと消えていったのは見なかったことにしよう。
何の弁護にもならないと思うが、店は綺麗で、お箸も個包装の割り箸で提供されるなど衛生面で怪しいところは特になかった。
注文したのはチキンのカオソーイ。
まろやかなエスニックカレースープが麺とよく合う。
辛さもしっかりあり、ライムを絞って爽やかに。
チキンがとても柔らかく絶品だった。
食レポは多少マシになってきただろうか。
リアル修行
初日にいきなり、1件の予約を入れていた。
準備編で【とあるアクティビティ】などと書いていたが、正しくはトレーニングである。
ムエタイジムの扉を叩く。
私は今から、ムエタイの観戦…ではなく、90分のパーソナルを受けようとしている。
ガチの修行だ。
全くの初心者であればグループレッスンを選んでいた(いや、そもそも体験などしない)と思うが、キックボクシングを2年半ほどやってきたためパーソナルで予約。
タイでムエタイ、これは密かにやってみたかったことの一つ。
初心者ではないと見るや、ウォーミングアップから強度の高いメニューが課されていく。
こちらがついていけなくならない限り、手加減はないらしい。
リングに上がるなどという経験も初めてだった。
うち60分は、担当アニキを相手にひたすらミット打ち。
1本につき2~3分で、間にわずかなレストを挟みながら15本ほどやっただろうか。
やりすぎだ。
「ガンバレ!!」「スゴイ!!」などと時折カタコトの日本語を喋るアニキ。
年齢不詳。ひょっとしたら私より若いかもしれない。
次々と出される指示を瞬時に理解し、その通りの動きで打ち込まなければならない。
間違えるとミットから外れて相手に直接打撃を加えてしまうことになり危険。
指示は基本的に英単語であり、日本でいつもやっていることと大きく変わらない。
そうか、ムエタイもキックボクシングも共通言語で意味が通じるのか。
タイ人相手に普通に練習できていることが不思議でならない。
スポーツにボーダーはないんだなと身をもって感じた。
エルボーだけはやったことがなかったため、肘の高さや角度の指導が入る。
一体いつ使うワザなんだこれは。
なぜ私は今エルボーの指導を受けているんだ…などと我に返ってしまいそうになるのを抑えつつ、90分が終了。
もはや疲れたという感覚すらない。
あと7日分の体力を温存しておく必要があるというのに、最初から飛ばしすぎだ。
やりたいことリストの一つ、【タイでムエタイ】は無事に”済”となった。
ジムのオリジナルTシャツまで購入してしまった。
ダウンストレッチを終え、ジムから退散する準備をしながら窓の外に目をやると、先ほどのアニキがほうきを持って何かと格闘している。
目の前を横切っていく黒く巨大な生き物。
目を疑ったが、黒いそれはオオトカゲだった。
全長1m以上はあると思われる野生の巨大トカゲが敷地内を走り回る異様な光景。
これは現実か?
バンコク中心部にあるルンピニー公園の池にはミズオオトカゲがたくさん生息しているらしく、そこからやって来たのだろうか。
ぜひ【バンコク オオトカゲ】で検索していただきたい。
衝撃のビジュアル&サイズ感だ。
その後どうなったかは分からないが、初日からこんなレアな出来事に遭遇するとは。
ついているのかもしれない。
近くて遠い旧市街
本日のビッグイベントは終了。
一旦どこかで休憩したい。
近くのショッピングモールの中の店で、タイティーを注文。
タイティーとは、甘くて独特な香りがするミルクティーで、オレンジがかった色をしているのが特徴。
クセになる味だ。
ハードトレーニングを経ての冷たい飲み物、格別に美味しいに決まっている。
のんびりしていたら日も暮れており、外は大渋滞。
早くホテルにチェックインして荷物を置きたい。
どうやってそこまで向かうか。
公共交通機関でのアクセスの利便性は微妙な場所だ。
バンコクの旧市街エリアにあり、距離にしてここから約6kmほど。
バスだといつ辿り着けるか分からない。
この交通量でバイタクに乗るのも気が引ける。
少し遠回りになってしまうが、ここは唯一渋滞の影響を受けない電車に乗るしかなさそうだ。
電車を降りてからも2km近く歩いてようやくホテルに着いた。
道中、大規模な道路工事が行われていてとにかく歩きづらかったこともあり、随分時間がかかってしまった。
ホテルの扉は施錠されている。
ちょうど宿泊客が外出するところだったためそのまま中に入る。
テーブルには私の名前が書かれた紙とペンが置かれている。
誰もいない…?
電話して呼ばないといけないのだろうか…
途方に暮れていたら、小柄なおばちゃんが奥から出てきた。
あらゆる説明を翻訳機に喋りかけて日本語にしてくれるなどとても親切だ。
部屋まで案内してもらったためわずかなチップを渡そうとすると、そんなとんでもないという素振りで断られたが、小銭だけですがと渡しておいた。
部屋は一人で泊まるにはもったいないほど広い。
すでにあと2日ほど延泊したい気持ちになっているが、残念ながら1泊しかできない。
部屋に置いてあるお菓子やシリアル、紙パックの牛乳など、すべて無料らしい。
タイではこのようなホテルに3,000円程度で泊まれてしまうのだ。
小さなバルコニーまで付いており、ドアを開けると目の前は川。
川の向こうにはカラフルなアパートのような建物がびっしり並んでいる。
部屋から見える景色まで素晴らしいとは。
あまりにも汗だくなため一旦落ち着かせてから夕食を食べに行く。
目星を付けていた店の前まで来ると、14名の集団客がぞろぞろと中へ…
テラス席も満席で相当人気店らしい。
しばらく待つことになるかと思ったが、奇跡的に屋内席に座ることができた。
マッサマンカレー(またカレー…!)にスプライトゼロ。
お冷やが無料で出てくるシステムはないため、何かしらの飲み物を注文する必要がある。
いかにもタイらしいカレーで、ハーブが効いている。
後から辛さが少し追いかけてくる感じ。
グリルチキンがごろっと入っている。
昼に食べたカオソーイと同じでかなりまろやかだ。
ご飯はジャスミンライス。
小鉢には紫キャベツのピクルスが添えられていた。
店の手伝いをしている兄妹?がとても可愛い。
500THB以上でないとクレカが使えないということで、現金で支払う。
前回はグリーンカレー、今回はマッサマンカレー、
次回またタイに来ることがあればプーパッポンカリーを狙いたい。
光と影
店を出て、【裏カオサン】と呼ばれるランブトリ通りを歩いてみる。
"裏"というからには本家があり、そちらは【カオサンロード】、バックパッカーの聖地として有名だ。
位置としては、ランブトリ通りの1本南側の通りがカオサンロードになる。
本家カオサンは事前サーチの時点であまりにも派手な印象だったため、まずは裏カオサンで様子を見ることに。
ネオンが揺らめき、どこからともなくパリピな音楽が聴こえてくる。
飲食店が軒を連ね、観光客がテラス席でお酒と食事を楽しんでいる。
欧米人が多く、アジア感は薄い。
裏カオサン、昼間はもっと落ち着いた雰囲気のようだが、夜はそれなりに賑やかだ。
あぁ…これは…
緑の葉っぱのマークが描かれた看板がそこかしこに見える。
大麻ショップだ。
タイでは医療用大麻が合法化されている。
つまり娯楽として大っぴらに吸うのは本来認められていないはず。
(これについては様々な情報が錯綜しており、正しいことはよく分からなかった)
何も知らなかったら気軽に立ち寄ってしまいそうなほどカジュアルに大麻が売られているのだ。
葉っぱの妖精かと思ったら大麻のキャラクターだったり。
裏カオサンでこれだったら本家カオサンは一体どうなっているんだ。
客引きに声をかけられたりしないよう、足早に通りを歩く。
観光地としてどのガイドブックにも載っているような場所でも、こういうグレーな側面があることを知っておかなければならない。
もちろん私が寄ったカレー屋のようにまともな店が大半だと思うが、危ない匂いがする場所を察知する嗅覚は絶対に必要。
というよりここでは本当の意味でヤバい匂いのするものが普通に存在しているため、それを嗅いでしまう前に察知することが大事だ。
少し外を歩くだけでも社会勉強ができてしまうのが海外。
まだ初日だというのに内容が濃すぎるのではないだろうか。
もう今日は帰ろう。
コンデジで撮ったらブレブレになったことで逆に良い味が出ている裏カオサン |
明日の朝食用のパンと水を買うため、コンビニに寄る。
そこら中にあるセブンイレブン、とても便利で助かる。
ホテルに戻り、もう寝たいところだがいくつか残タスクが…
まず洗濯。
持参の洗剤で適当に洗い、極限まで絞ったりバスタオルで挟んだりして水を抜く。
ハンガーやS字フックを駆使し、部屋のあらゆるところに引っかけて干す。
面倒臭いが、着る服がなくなってしまうためやるしかない。
次にお金の計算。
どこで何にいくら使ったのかはその都度メモっており、それぞれの金額をTHBから円に換算する。
すべてアプリの計算機能でカウントしているため、支払った項目と金額などが一目で分かるようになっている。
明日以降も毎日この作業を行う。
最後に、マレーシア入国のためのMDACの登録。
サイトにアクセスし、個人情報の入力欄を埋めていく。
決して難しくはないものの、これで合っているのだろうか…
QRコードが発行され、無事に登録は完了した模様。
日本時間で深夜2時。
朝4時半起きだったため、ほぼ一日起きっぱなしだ。
とりあえずもう寝よう。
明日は長距離移動が待っている。
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