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摩天楼
たった1泊でクアラルンプールを発つことを惜しみつつ、ホテルをチェックアウト。
バンコクの宿に次いで快適だった。
やはり個室は過ごしやすさが全然違う。
今日はほぼ移動に費やすことになる。
最後にクアラルンプールの街を少し散策しよう。
地下鉄に乗って向かったのはKLCC公園。
泊まっていたエリアとは別の国に来たのではないかと思うほど都会だ。
東京・丸の内のようなオフィス街が、ここKLCC地区。
ペトロナスツインタワーをはじめとして、見渡す限り高層ビルが立ち並ぶ。
現在進行形で建築中のものもある。
公園はとても綺麗に整備されており、人々の憩いの場になっていた。
ショッピングモールの前がバス乗り場になっており、まずはその近くまで移動して昼食を取りたい。
1.5kmほどの道のりを歩く中でも移り変わる景色。
オフィス街からは打って変わって、どんどんごちゃついてくるのが分かる。
それもそのはず、この辺りはクアラルンプール屈指の繁華街であるブキッ・ビンタン地区だ。
飲食店も増えてきた。
アヤムゴレン。
揚げた鶏肉という意味で、極めてシンプルな料理。
ご飯とジャスミンティーも注文。
味の染みた鶏肉と米の組み合わせは間違いない。
正直なところ量は少し足りなかったが、今日はこのあとほとんど歩かないから大丈夫だろう。
時刻は12時。
バスに乗る前に、ショッピングモールの中のスーパーで飲み物を買っておこう。
果物や野菜、魚などの生鮮食品がそのまま台の上に大量に積まれており、どれも新鮮そうで美味しそうに見える。
一通りの棚を物色し、食品パッケージや物価感を見るのが結構楽しい。
車中のお供も調達できたということで、バス乗り場へ向かう。
予感
13時になってもバスが来ない。
何だろう、この胸のざわつきは。
嫌な予感がする。
バス乗り場はここで間違いないはず…
きっと遅れているだけ…だろう。
20分後、ようやく姿を現した赤いバスに安堵し、乗客が降りてくるのを待って意気揚々と乗り込みかけたとき、ドライバーに「ダメだ、乗れない」とジェスチャーで制された。
乗車拒否の意味が分からぬまま、ドアが閉まって走り去るバス。
え、ちょ待っ…え?…
絶望の2文字がはっきりと見える。
シンガポールへの扉が閉ざされていく音まで聞こえる。
これはいよいよまずいことになってきた。
いや、そもそも今のは本当に自分が乗る便ではなかったのではないか。
降りてくる人がいた時点で何かがおかしい。
だとしたらまだ可能性はある。
もうしばらく待ちながら最悪の場合を考えよう。
近くにいたアニキに声をかけられる。
「シンガポールに行くのか?13時のバスを待ってるだと?赤いやつはさっき行っちまったじゃねぇか、うちのに乗ってけよ、ほら」
タバコをふかしながら暇そうにしているアニキ、どうやら近くに停車中のバスのスタッフらしい。
※聞いた英語をそれっぽく訳しているため、非常にわざとらしい口調になっていることをご了承いただきたい。
このタイミングでそんな話を持ちかけられて、一瞬心が揺れないことはないだろう。
しかし待て、カモになってどうする。
4,000円を投じて予約したバスへの望みを、私はまだ捨てていない。
怪しいアニキとはそれ以上話さず、一旦退避。
そういえばバスのチケットに、問い合わせ先の電話番号が書いてあった。
ここにWhatsAppでメッセージを送ってみよう。
アプリを開いた瞬間、2件の新着履歴が目に入り、すべてを悟った。
8:50「申し訳ございませんが、本日予定されているご旅行の出発時刻が調整されたことをお知らせいたします。
バスは15時に出発する予定です。
この変更によりご迷惑をおかけしますが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。」
11:40「出発時刻を15時に調整する旨、ご了承ください。」
朝の時点でバス会社からきていた連絡。
あまりにも既読が付かないから、昼前にさらに念押しの一言が添えられているではないか。
現在の時刻は14時前。
そのメッセージに今気付くとは何たることか。
なぜかポップアップ通知の設定がうまくいかず、自分でアプリを開かないとメッセージがきていても気付けない状態になっていたのだ。
もっと早く問い合わせを試みるべきだった…
そもそもWhatsAppをやっていなかったら知る術もなかったのか…
3日前、ホテルスタッフとの連絡手段として何のためらいもなくWhatsAppをダウンロードした自分よ、ナイス判断だ。
これがなかったらアニキの話に乗り、無駄な金を払っていたかもしれない。
運行自体がキャンセルされたわけではなかったのは不幸中の幸い。
それにしても2時間後ろ倒しとは…
ただでさえタイトなスケジュールを組んでいる中、2時間のロスはかなり痛い。
15時の便だとシンガポール到着がかなり遅くなってしまいそうだと思い、13時の便を予約していたのだ。
すでにバス待ちで1時間を失っているため、今からどこかへ行けるほどの余裕もない。
精神疲労がどっと押し寄せてくる。
またモールに戻って、飲み物でも飲んで心を落ち着かせよう。
つい1時間半ほど前、節約のためにスーパーでペットボトルの飲み物を調達したというのに、結局ドリンクスタンドに吸い寄せられてお洒落な飲み物を買ってしまった。
この出費は仕方ない、大目に見よう。
モールのベンチにバックパックを置き、腰を下ろす。
このまま寝転がってしまいたい…
とりあえず今日中にシンガポールには行けるのだ。(到着予定時刻は不明)
もうそれだけで十分だろう。
これ以上何を望むことがあろうか。
束の間の休憩で少し元気を取り戻し、再びバックパックを背負ってバス乗り場へ向かう。
2度目の赤いバス。
やっと、本当に乗ることができる。
ドライバーとは別で、係のお兄さんが同乗するらしい。
この人だ、WhatsAppで連絡をくれたのは…!
そのメッセージに気付くのが遅すぎたのは私です。
大丈夫ですよ、ちゃんとこうして今ここにいるので…
シート配置は2列1列で、座り心地は高級ソファのよう。
乗客はかなり少なく、席はガラガラ。
あぁ、きっと13時の便の予約客が少なすぎて15時の便にまとめられてしまったんだ…
今さらそんなことはどうでもいい。
お願いだからシンガポールまで連れていってほしい。
快適な一人掛けシートに座ってipadとキーボードを膝に置き、今日の一連の出来事を打ち込む。
通路を挟んで隣のシートには欧米系のギャル2人。
スマホで動画を見てときどき爆笑したりと楽しそうだ。
シンガポール入国のために必要なSGACの登録を改めて確認したり、途中の休憩でストレッチしたり、またipadに打ち込んだり、全く退屈ではなかった。
しかしよく眠くならないものだ。
連日歩き回り、平均1時間ほど普段より睡眠時間が少ないというのに。
それだけ気が張り詰めているということなのかもしれない。
越える
国境が近付いてくると、バスの乗客に向けてアナウンスが入る。
重要事項を英語でしか聞けないのは不安だ。
必死に耳を傾ける。
まずマレーシア出国のイミグレ。
パスポートだけ持って、ほかの荷物はバスに置いたままでOK。
出国完了したらバスに戻ってくる。
次にシンガポール入国のイミグレ。
荷物はすべて持って、入国完了したらまた同じバスに乗る。
おそらくそんなことを言っているはず。
ここまで聞き取れていれば大丈夫だろう。
タイとマレーシアの国境では、タイ側で降りることなくマレーシアに入り、そこでタイの出国とマレーシアの入国を順番に済ませたが、マレーシアとシンガポールはそうではないらしい。
きっちりマレーシア側で出国し、移動してシンガポール側で入国。
普通に考えてこちらのやり方が一般的な気がする。
マレーシア側のイミグレでは、パスポートにスタンプを押してもらって一瞬で出国が完了した。
バスに戻ってすぐに出発。
ジョホール海峡にかかる橋を渡り、国境を通過。
シンガポール側のイミグレまでは、大型バスで混んでおりなかなか進まなかった。
審査はすべて機械で。
パスポートを読み込ませ、その場で顔写真と指紋をとるとゲートが開いた。
次に荷物検査だと思っていたら、バスを待つ外のスペースに出てしまった。
もう終わり?
荷物、何もチェックしていないがこれでいいのか?
ギャル2人を含め、同じバスに乗ってきた人たちも皆外に出てきており問題なさそうだ。
こんなにあっけなく入国できるものなのか。
タイからマレーシアに入るときは気休め程度に荷物をベルトコンベアに通したが。
再びバスに乗り込み、ここからは完全にシンガポールの道になる。
3ヵ国目突入。
見たことがないような形をした高層ビル(ほぼオブジェ)の数々から放たれる光。
まるで近未来都市にやって来たかのようだ。
クアラルンプール出発から6時間、シンガポールの中心地に到着。
時刻は21時ちょうど。
本当に長かった。
辿り着けただけでも感謝せねば。
空腹感と疲労がどっと押し寄せる。
宿のチェックインより先にとにかく何かを胃に入れておきたい。
あれ、また同じようなものを…
2日前にも食べた点心。
これを選んでおけば確実。
ペナン島で食べた点心の2/3くらいの量で値段は倍以上…
1食で2,000円を超えてしまったのはこれが初めてだった。
物価の高さに一気に目が覚める。
ここはもうシンガポールなんだ…
注文はQRコードから、決済もクレカ情報を入力してオンラインで完了。
進んでいる…
量が足りずもっと頼みたかったが、あまりの高さにぐっとこらえた。
ドミトリーにチェックインしたのは22時を回っていた。
英語で説明を聞く中で理解できたのは「夜間の飲酒NG」と「ドリアン・マンゴスチンNG」ということ。
クアラルンプールのホテルでも、ドリアン禁止の貼り紙があった。
ここではマンゴスチンが新たに登場。
ドリアンは匂いがNGなのは分かるが、マンゴスチンを禁止にする理由は一体…
調べてみると、マンゴスチンの赤い皮から出る汁がシーツなどに付くと取れないからだそうだ。
どちらもホテル泣かせの果物というわけか…
それを部屋に持ち込む猛者がいると…
ドミトリーだとたまったもんじゃない。
飲酒については、飲んではいけない(販売してはいけない)時間帯がシンガポールの法律で定められており、違反すれば罰金だ。
最後に泊まるのは相部屋。
上と下の2段構造で、寝るためだけのスペースが確保されている。
1部屋に10人ほどだっただろうか。
ブラインドでプライベートを保つ。
すべての音がダダ漏れになるため、カバンのチャックを開けるのも気を遣う。
私は上のハコが割り当てられており、梯子を使ってのぼる。
ブラインドを閉めてしまえば秘密基地のような個室感があり、狭いところが好きな人にとっては落ち着く空間だと思う。
シンガポールだけは、個室を取ることができなかったというのは準備編で書いた通り。
このドミトリーは、シンガポールの宿の相場からすると破格だが、とても綺麗で快適だった。
海外の相部屋に泊まるというのは初めてだったが、宿泊者のマナーも良く、日本のカプセルホテルとほとんど変わらないと感じた。
狭いハコの中で、ようやく寝転ぶことができた。
まずは、シンガポールまで無事にマレー半島を縦断できたことに小さく拍手。
バンコク出発から4日、約1,800kmの道のりだった。
バスのリスケはさすがに参ったが、ちゃんと予定日にここまで辿り着けているから結果オーライだ。
明日の今頃にはもう、空港でマニラ行きの飛行機を待つことになる。
シンガポールで絶対に食べておきたいものをピックアップし、その店を基準として散策ルートを考える。
ルート上にうまく観光名所を組み込みつつ…
良い感じの(弾丸)プランを描けたので、今日はしっかり寝て明日に備えよう。
旅も終盤、改めて気を引き締めて。
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