ベトナム・インドネシアに行ってきた。〜day4→8〜『バリ島留学日記』


本当の目的


社会人留学。
実現する方法を探していた。


仕事では全く英語を必要とせず、日常生活においても差し迫って英語を話せるようにならないといけない理由もない。
しかしずっと留学には行きたいと思っていた。


やはり英語は喋れるに越したことはない。
ここ数年はアジアの国々ばかりうろうろしているが、どこに行っても想像以上に英語を喋れる人が多い。
聞き取りや読み書きは最低限できても、話すとなると自分でも呆れるほど言葉が出てこない。
現地の人と会話し、より柔軟に旅をするためには、英語力が必要なのは明らかだった。


英語を喋らざるを得ない環境に強制的に身を置かないとだめだ。
欧米留学に行けるようなお金はない。
リミットは1週間。
アジア一択か…


アジア圏の英語留学でまず名前が挙がるのはフィリピン・セブ島。
フィリピンは…この前行ったマニラの印象が強烈だったからなぁ…うーん…


調べていくと、もう一つの島が候補に浮上。
あまりメジャーではないが、インドネシア・バリ島も格安で英語留学ができる。
1週間単位で開校、マンツーマン、食事付き、個室泊というこれ以上ない条件が揃っていた。
しかも、まだ行ったことのないインドネシア。
東南アジア好きとしては心が躍った。


バリ島といえばリゾート地。
半分遊びに行くようなものなのでは?と思われても仕方ない。
しかし学校の周りには目立ったものは特に何もなく、20分以上歩いてようやく海が現れる(昨日の珍道中参照)、そんな場所だ。
1週間、授業で精一杯だろう。
近くに誘惑がないのでとにかく勉強に集中するしかないというのも、ある意味ありがたい環境。


意を決して入学を申し込んだ。
たった1週間、されど1週間。
全ては自分次第。



学生生活スタート(月曜日)


7時半、食堂で朝食を食べる。
なんて開放的な空間なんだ。
オープンエアなので風が吹き抜けていく。
食パンにオムレツ、フルーツ、コーヒー。
いつもよりよほど豪華な朝食。
これを毎日食べられるのか…

食堂からの眺め(右手の建物が宿舎)


一度部屋に戻って準備してから、徒歩10秒の校舎へ向かう。
最初にレベル分けテストを受けると思っていたら、1週間しか滞在しない人はテストなしでいきなり授業に入るらしい。


1限目はリスニングクラス。
まずは自己紹介から。
留学に来た理由、趣味のこと、仕事のこと、なんかとにかくたくさん質問され、必死に答える。
キックボクシングをやっていると言うとかなり驚かれた。
このネタはどこで話しても、こちらが恐縮するくらい良い反応が返ってくる。
ただ好きでやっているだけの趣味だが、話題を広げる突破口となり、ちょっとしたコミュニケーションツールとして一役買ってくれている。


さらに昨日一人でビーチまで行ったと言うと、
歩いて行ったの!?犬いっぱいいたでしょ?危なくなかった?
あ、、めっちゃ怖かったです、、
やはり現地の人でも危険と認識しているのか。
これを聞いた後だったら徒歩での外出はビビって断念していたかもしれない。
何も知らないうちに勢いで出歩いておいてよかった。


今住んでるのはここで、でも生まれはここで、高校卒業後にこっちに引っ越して、仕事であっちに行って…
英語で説明するのはなかなか大変だ。
リスニングクラスでもこんなにがっつり喋るのか。
先生が言っていることは大体わかるが(わかりやすく喋ってくれているので当然)、自分が喋るとなると詰まる部分が出てくる。
日本語でも乏しい自分のコミュニケーション力を絞り出し、脳内を英語で染めることに全力を注ぐ。
20分以上雑談していただろうか、ようやく本題に入る。
残りの時間をリスニング問題を解くことに費やし、あっという間に最初のクラスが終了した。


2限目は文法クラス。
1コマずつ違う先生に教えてもらうことになっており、明日以降も同じ時間割で授業を受けることになる。
自己紹介、1限目と同じようなことを一通り話す。
昨日ビーチまで行ったくだりで猿にも遭遇したと言うと、一度も見たことがない、と。
現地の人も見たことがないものを、着いた初日に見るって…ラッキーなのか…?


旅行が好きという話の流れでバックパッカーなの?と聞かれ、
そうです、今回もバックパックだけで来ました
え?1週間もいるのに?じゃあミニマリストなの?
いや、そういうわけじゃないんですけど…


いろんな角度から質問が飛んでくる。
とにかく会話を続ける。


ドラマとか映画とかは見るの?
全然見ないですね…YouTubeで旅系のvlogはよく見ます
ほかには?
日本のコメディーも見ます、日本語で「お笑い」って言います
そんな調子でやはり20分以上フリートーク。
文法の授業は、日本語で説明を聞くよりもスッと理解できる部分が多く、これは意外な発見だった。 


3限目は本来スピーキングのクラスだが、初日ということで今日だけオリエンテーションに。
スタッフさんから学校のことなど少し説明を聞き、今日入学した人たちと一緒に近隣のドライブに連れて行ってもらう。


昨晩暗い中歩いていたエリアの全貌がだんだん明らかになっていく。
マクドナルドもケンタッキーもある。
バリの人はみんな歩かないんですよね、すぐ近くでもバイク乗っちゃうから。という話を聞き、
やっぱそうですよね、と。
少しずつバリ情報を入手し、この街が興味深くなってきた。


12時、食堂で昼食。
たくさんの選択肢の中から、ミーゴレンをチョイス。
せっかくなら現地メシいっとかないと。
ミーゴレンははじめて食べたけどうまいなぁ…
同じく学生として滞在している人たちと相席で食べる。
会社員、高校教師、フリーランス、親子、大学生、高校生…
世代もバックグラウンドもバラバラな、バラエティに富んだメンバー。
そんなみんなの話が面白くないわけがない。
本当に学生時代に戻ったような感覚で、学食タイムを楽しむ。


午後の授業がスタート。
4限目はライティングクラス。
昨日から今日までの出来事を文章で書くと…
幸いにもネタはたくさんある。
普段からこんな謎ブログを書いているくらいなので文章を書くのは好きだが、日本語と英語では当然違う。
聞く、話す、書く。あらゆる感覚を研ぎ澄ませて授業に集中。


5限目はグループクラス(生徒2人)。
のはずだが、たまたま今日は私だけだったので実質マンツーマン。
音楽は何を聴くの?と聞かれ、何でも聴きます日本の音楽も洋楽もK-POPも、と答える。
先生も結構K-POPに詳しくて、JYPグループが好きなんですなどというコアな話が通じて地味にうれしかった。


そうだ、これも聞いておかないと。
Fujii Kazeは知っていますかと聞いてみたら、食い気味でYes!と返ってきた。
やはり「死ぬのがいいわ」はインドネシアでも相当有名らしい。
しかもそれだけではなかった。
あの曲なんだっけな…(先生がPCで検索)
そうそう、「matsuri」!この曲も好きだよ
まつりも有名なんですか、それは知らなかったなぁ
異国の地で、共通の音楽の話題で盛り上がれるってすごいなと。
音楽にボーダーはない。


6限目はリーディングクラス。
観光地を紹介する記事を読んだ後、自分が今住んでいる街の紹介をすることになり、はじめて来る人に何をおすすめしますか?という問い。
福岡…食べ物だったら豚骨ラーメンですかね…
値段は高い?
だいたい安く食べられます
と言って、いや、インドネシアの物価で考えたらだいぶ高いわと思い、「日本では」安いと強調し直したり。
文化も習慣も価値観も違うから、質問一つ答えるにしても考えさせられることが多い。


7限目は自習。
この時間の使い方は自由だ。
校舎のロビーにある机で、少しだけ出ていた宿題を終わらせる。
宿題なんて響き久々に聞いたよ…
この感覚めちゃくちゃ懐かしいな…


8限目はフリークラス。
参加したい人は自由に参加していいよーというスタンスのクラスだ。
1週間しかないので、受けられる授業は全部受けよう。
この日は絵しりとりだった。
キャラの濃い先生のクラス、終始笑いに包まれてこの日の授業は全て終了。
朝9時から夕方6時まで、丸一日英語に触れるというのはこんな感じなのか。
疲労よりも充実感が上回る。


そのまま流れるように食堂へ。
夕食はカリアヤム。(インドネシアのカレー)
グリーンカレーみたいな味だった。
一日中頭を使っているからか、とてもお腹が空く。
授業が終わったらすぐにご飯を食べられる環境がありがたい。


自分の部屋に戻り、学生生活初日が終了。



火曜日


早朝は風が爽やかで涼しい。
朝食を食べ、少し周辺を散歩する。
幼稚園の子どもたちが列をなして歩いてきた。
先生に連れられているとはいえこの交通量が多い道を…!それ以上に犬!
みんなきっとたくましく育つんだろうな。

ワイルドな朝散歩


日本ではあり得ないくらい朝の時間に余裕がある。
8時なんていつもならとっくに働いている。
こんなにスローな生活は本当に久しぶりだ。
しかし授業が始まるとがっちり時間が決まっているので、一気に集中モードに切り替える。


昨日と同じ時間割で進んでいくため、ここから先はざっくりダイジェスト日記で。


授業の最初は必ず雑談からスタート。
昨日の放課後は何をしたか、何を食べたか、今日の放課後の予定は?
これは毎日同じことを質問される感じだな…
何かしらのネタを用意しておく必要がある。
そしてどの授業でも「映画は見るか」と聞かれ、ほぼインド映画しか見ていない私にとっては最も回答に窮した話題だった。
インド映画が好きだなんて言ってる日本人いないですよね。
日本のアニメも全然興味ないからおそらく先生たちの方が詳しいよ…
映画とアニメはもう少し知っておくべきだったなぁ


昨日はオリエンテーションでスキップとなっていたスピーキングクラスは、ディスカッション。
「ChatGPTは学校で許可されるべきか?」
「男女の友情は成立するか?」
「幸せはお金で買えるか?」
無理だ、むずすぎる。
内容が深すぎるのよ。
日本語でも頭を悩ませるような問いを次々と浴び、簡単な単語で至極チープな内容しか話せないことが情けなくなってくる。
私のレベルでは英語で細かいニュアンスを伝え切ることができない。
はぁー…難しい…


昼食にはナシゴレンを食べ、エネルギーを補給。
昨日はマンツーマンとなったグループクラスは、今日はもう一人も揃って先生と3人でトーク。
6限目までの授業を終え、自習時間に少し出かけることに。
宿舎に来てからボディーソープなし生活だったため、買いに行きたい。
普通に歩けば10分で着くような距離でも、ところどころで犬が登場するため少し様子を見ながらゆっくり進んでいたら時間がかかる。
ちょうど帰宅ラッシュの時間帯らしく、行き交うバイクにも気を付けつつ。
日用品の買い出しで味わうようなスリルじゃないのよ。


何でも売っているスーパーに到着。
せっけんとノートと水を購入し、急いで宿舎に戻る。
そしてまたすぐに学校へ。
戻り時間はギリギリだ。


8限目のフリークラスを終え、夕食を食べて一旦部屋に戻る。
ひと息ついてからまた食堂へ向かう。
毎週火曜日は放課後ヨガクラスの開講日らしく、参加させてもらうことに。


プロの先生が、一切の淀みなく英語で説明しながら流れるように次々とポーズをとっていく。
1時間みっちり、それなりにハードなヨガ。
バリ島は世界中からヨギーが集まってくる場所でもある。
こんなことまで体験できるとは思っていなかった。
最後は部屋を暗くし、シャバーサナ(脱力仰向け)で無になる。
整った…



水曜日


昨日のヨガ効果で、ものすごく深く眠れた。
朝から走ってビーチまで行ってきたという話や、ローカル屋台で朝食を食べてきたという話など、みんなのアクティブな朝活話を聞く。
朝ビーチ良いなぁ…卒業してからの楽しみに取っておこう…

※この日も8限目まで受けて終了。



木曜日


学生生活4日目。
もう明日卒業するなんて早すぎる。
卒業する人はスピーチを1~2分程度でせねばならないらしく、自習時間に必死に準備。


そして今日は、放課後に観光へ出かけることになっている。
バリの伝統舞踊バロンダンスを見られる場所があると教えてもらい、ぜひ行きたいですと。
せっかくここまで来てるんだから一日くらいは放課後に遊んでおかないと。


みんなでタクシーを乗り合わせて向かった先は、「ガルーダ・ウィスヌ・クンチャナ(GWK)」。
一帯が広い公園のようになっていて、劇場や巨大像、土産物ショップや飲食店が集まっている。


30分間のバロンダンスを鑑賞。
「バロン」とは、獅子の姿をした聖獣。
日本人が獅子舞で思い浮かべる獅子のエチゾチックVerといったところ。
本来バロンダンスは神聖な儀式であり、バリヒンドゥー教の思想や世界観が反映されている。
こういった劇場で観賞できるものは、観光客向けにアレンジされたものだ。


物語は壮大かつドラマチックで、凝った衣装を纏った登場人物が次々と出てくる。
主人公の眼力、というか顔芸の迫力がすごくて、思わず惹き込まれる。
バックのスクリーンを使った映像演出で近代テクノロジーもしっかり取り入れられていた。
途中から観客一体型になり、座席の足元に置いてある打楽器をみんなで鳴らして盛り上げるなどエンタメ要素もあり。

バロンの個性強め


バロンダンスを観た後は、すぐ近くに立っているジャイアント像まで歩いて行ってみる。
この像は一体何かというと、神鳥ガルーダに乗るヒンドゥー教の守護神ヴィシュヌ、らしい。
高さは120mもあり、インドネシア最大、台座も含めれば世界4位。
暗闇の中ライトアップされている姿に圧倒される。

ラスボス感

近くで見るとちょっと怖い

像の下が建物になっていて、その中にあった店でそれぞれが好きな味のアイスを注文。
放課後に学生同士で出かけてアイス食べるとか…
自分の実際の青春時代でもそんなことしてなかったよ…
今さらながらめっちゃ青春してるわ…


最後はGWKの敷地内のレストランで夕食を食べながら、なぜバリに留学に来たのかを一人ひとり発表する流れに。
当然、全員動機はバラバラで、聞いているだけで興味深いし刺激をもらえる。
放課後プチトリップはとても楽しく、ほくほくで宿舎に戻った。



最終日


いよいよ最終日。
昨日、毎日授業でお世話になった先生たちに手紙を書こうと思い、短いメッセージに日本のアニメキャラのイラストを描くなどしていたら深夜2時になってしまい完全に寝不足。
たった1週間いただけの生徒のくせに気合いを入れすぎだ。


ラスト昼食には、サテを。
インドネシアの串焼きで、甘辛いピーナッツソースがかかっている。
新感覚焼き鳥、個人的にはとても好きな料理だ。

味噌のようなピーナッツソース


最後の授業をすべて終え、卒業式。
短かったけど濃かった。
こんなに勉強したのは高校以来だろうか。
日本では英語に触れる量が圧倒的に不足していることを改めて実感したし、もっと話せるようになりたいという気持ちを奮い立たせてくれた先生たちには本当に感謝だ。
道のりは長いが、楽しみながらとにかく継続あるのみ。


食堂で夕食を食べた後、数人で近くのカフェへ。
近くの、と言ってもそこに行くまでの道中が相変わらずエキサイティング。
卒業した人も残る人も、またそれぞれの新しい生活が始まる。
ひとしきり喋って解散。
またどこかで。
きっと会えるような気がしている。


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